東京高等裁判所 昭和32年(ネ)539号 判決
証拠を綜合すると、被控訴人は昭和三十年六、七月頃山本三都司を雇い入れ、同人に金融面の事務を担当させていたこと、被控訴人の代表者浅古衍は山本にその事務処理を円滑にするため振出人欄に被控訴人の代表者の氏名をゴム印で記入し、その名下に代表者の印章を押した手形用紙を預けておくとともに、時宜に従い、手形要件を補充し、手形割引の方法で金融を図る権限を付与したこと、及び本件手形は山本がその権限の範囲内で先に被控訴人の代表者浅古術衍から預けられていた手形用紙の振出人欄にゴム印でその氏名を記入し、名下に代表者の印章の押してある手形用紙に控訴人主張のような要件を補充して振り出したものであることが認められる。被控訴人は本件手形は山本が偽造したものであると主張し、被控訴人の代表者尋問の結果中には右偽造の疑がある旨の供述があるけれども、その供述はたやすく信用し難く、(右代表者が原審における尋問で、山本三都司は昭和三十年九月中に被控訴会社を退職したと供述している点は特に信用し難く、そして、証人議古倍治の当審における証言によると、山本は昭和三十年九月中に被控訴会社を退職したのではなくて、会社を休むようになつたものに過ぎないことが認められる。)他に本件手形が山本の偽造にかかるものであることを認めるに足りる証拠はないから、被控訴人の主張及び立証によつてはいまだ前認定を動かすことができない。